賃貸終了時の退去費用問題を防止するために必要なこと
2023/06/27
借りる
退去問題については国のガイドラインがありますが、改正民法により退去時の退去費用のことが明文化されました。
これは退去時のトラブル相談が多いことが理由です。
しかしトラブルの多くは、どうしたらトラブルになるのか事前にわかっていれば防止できることばかりです。
本記事では退去費用の内容、相場、トラブル防止法などを説明いたします。
この記事は大阪で創業50年以上の第一住建グループが運営する不動産ワンストップサービスINOVEの学生賃貸サイトが提供しています。
アパートを引越すときに請求されるかも?退去費用とは
アパートの引越しを行う場合には退去費用が請求されます。
この退去費用は2つに分けられます。
・原状回復費用
・ハウスクリーニング代金
その他、あまりに汚れが酷い場合などは、別途費用を請求されることがあります。
退去費用は「原状回復の義務」を果たすために払うもの
退去費用のうちの原状回復費用とは室内の汚れ、傷などを直すための補修費用です。
なぜ、このような原状に戻す費用が出ていくときに請求されるのかというと、アパート室内を普通に使用して汚れた、傷つけた以上の汚れ、傷をつけてしまったときには、この汚れ、傷を賃貸人が直して出ていくという考え方があるからです。これを「原状回復の義務」といいます。
「原状回復するべき人」を判断するガイドラインがある
原状回復の義務を果たすのはいいとしても、どこからどこまでの範囲をアパートを貸している人、借りている人どちらが直すのか判断する基準がありませんでした。
退去費用については、アパート賃貸問題でも苦情、トラブルが多い項目になります。そこで、平成10年3月に国土交通省住宅局より原状回復をめぐるトラブルとガイドラインが公表されました。このガイドラインには「原状回復するべき人」も明記されています。
入居者(借りた側)が退去費用を払う場合
入居者が退去費用を支払うのは、以下の場合とガイドラインに定められています。
● 入居者がわざと室内を壊した場合
● 入居者があやまって室内を破損してしまった場合
● 一般的、客観的に見て、通常通り室内を使用する以上の汚れ、傷をつけてしまった場合
例えば、わざと壁を叩いて割った、あやまって引越し作業中にひっかき傷を作ってしまった、タバコを吸いあきらかにクロスを汚してしまったなどです。
大家さん(貸した側)が原状回復する場合
貸している側が原状の回復をする場合には、以下のことがあります。
● 入居者が使用していた室内の汚れ、傷が、一般的、客観的に見て通常通りに使われていると判断されるような場合
● 入居者が引越ししアパートの部屋が空き家になった後、新たな入居者を探すために行うリフォームや補修の場合
例えば、テレビや冷蔵庫を置いていた裏側のクロスの黒ずみや、壁にポスターやカレンダーなどを留める画びょう程度の小さな穴しか空かないもので、空いた小さい壁の穴などです。
退去費用の相場は?どのくらい払っている人が多いのか
退去費用は部屋の広さ、汚れの内容、度合いにより変わってきますが、一般的には、以下のような金額感の退去費用を支払っているようです。
● ハウスクリーニング代金
~30平方メートル未満 1万5,000円~3万円
50平方メートル以上~ 5万円~
● 原状の回復費用の平均(間取)
ワンルーム、1K 4万9,980円
3LDK、4LDK 9万139円
● 原状の回復費用の平均(居住年数)
~3年 4万9,431円
4年~6年 6万1,694円
~7年 8万7,090円
実際に支払うのは退去費用が敷金を超えた場合
敷金とは、借りる人が貸す人に渡す預り金です。
この預かったお金で入居者の家賃未払い、原状の回復費用の未払いなどを防止します。
借りていた人が原状の回復をするときに、原状の回復費用が多額になり敷金の金額を超えてしまうと、借りていた人は追加で貸していた人にお金を支払わなければいけません。
敷金0円の場合や、最初から賃貸契約で原状の回復費用を決めてしまう場合はご注意ください。
アパートの退去費用額を安くする方法
退去費用を安くするためには、以下の方法があります。
● 原状回復の見積もりを取り管理会社へ提出(原状の回復工事は貸した人が決めるため、貸した人が頼んだ工事会社がきちんと見積もりしているか比較するのに必要)
● 室内、庭を徹底的に掃除する
などがあります。
入居時:契約内容を確認し、暮らす前の状態を記録しておく
ガイドラインがあるとはいうものの、入居のときの賃貸契約書の内容が優先されてしまいます。
賃貸契約書にハウスクリーニング代金を先に決められてしまっているケースをよくみかけます。
最初に金額が決まってしまっていると、後に交渉することはできませんので、入居時と退去時の写真を撮影し、比較させるというのが効果的なので、事前に準備しておきましょう。
暮らしている間:掃除やメンテナンスをこまめにする
退去費用を抑えるには暮らしている間の掃除が重要です。
特に水回りの掃除、換気はしっかり行うようにしましょう。
カビが発生してしまい、ゴムパッキンに移ってしまうと掃除では取れなくなります。
カビはほこりを栄養源にしますので、室内に湿気が溜まると室内にもカビが生えます。
室内の清掃もこまめに行いましょう。
退去直前:大掃除とできる範囲の修繕をする
退去前の大掃除が大切です。普段は荷物があってどうしても清掃できなかった場所などもしっかり清掃しましょう。
掃き掃除、拭き掃除ともに行うと効果的です。
庭がある場合、草が茂ってしまっていることも退去費用を請求される原因になるので草は全て撤去してください。
壁の画びょうの跡があまりに酷い場合は、自身で補修することも考えましょう。
退去時請求されたら:見積もり・内訳を教えてもらう
掃除や補修など対策を行っても、退去時には退去費用を請求されることがあります。
管理会社、大家さんから退去費用の総額だけ聞いて納得してはいけません。
しっかり見積もりの内容を確認し、入居時の賃貸契約書で取り決めた金額を超えていないか、見積もりは客観的に見て高くないかを確認してください。
確認することにより、交渉できる項目が発見できるかもしれません。
アパートの退去費用が高額だった、そんなときどうすればいいのか
退去費用が高額だった場合は以下のところに相談しましょう。
● 管理会社
● 消費者ホットライン
● 独立行政法人国民生活センター
● 一般社団法人消費者協会
● 公益社団法人日本賃貸住宅管理協会
● 弁護士
踏み倒しや無視はしない
もし高額な退去費用が管理会社、大家さんより来たとしても、絶対に踏み倒しや無視をしてはいけません。
もし、踏み倒しや無視を続けたときは、裁判まで発展するケースがあります。
ここでは踏み倒しや無視をした場合、どのような流れになるのか説明します。
無視した場合の第1段階:管理会社から通知がくる
最初の段階として管理会社や大家さんから連絡がきます。
この場合は、まだ相手も催促をしているだけですので、もし高額な退去費用が正しいものかどうか確認している段階であれば、きちんと相手に「今、専門家に相談しているので待ってください」などと、はっきり伝えましょう。
いつごろ回答するかを明確にして伝えれば大丈夫です。
無視した場合の第2段階:連帯保証人に連絡される
しばらく連絡を怠っていると、親など連帯保証人に退去費用の請求がいってしまいます。
連帯保証人は入居者と同じ立場のため、高額請求された退去費用を入居者の代わりに支払わなければなりません。
入居していない連帯保証人は、室内の状況や高額な退去費用が正しいか確認することができないため、自身で解決したほうがいい結果になるはずです。
無視した場合の第3段階:裁判になるケース
これ以上無視をすると裁判に発展する可能性があります。
無視を続けたことを正当化することは難しいですし、正当な退去費用が出たとしても弁護士の費用などが発生してしまいます。
結果、当初に請求された退去費用を支払ったほうが安かったということにならないよう、しっかり最初から対応しましょう。
管理会社に相談してみよう
高額な退去費用を請求してくるのは管理会社である場合が多いです。相談ではなく交渉と思ったほうが良いかもしれません。
管理会社は大家から委託を受け管理していますが、自社の利益を出すために高額な工事見積もりを出してくることがあります。
管理会社からの見積もりを書面でもらい、入居者も自身で見積もりを取得します。
相見積もりを行い、差が大きい項目などおかしいと思うところは、管理会社と交渉しましょう。
公的な相談窓口に相談してみよう
管理会社との相談が上手くいかないときは、早めに公的な相談窓口に相談してください。
1人だと解決方法がわからず、悩んでしまい時間が過ぎてしまいます。
何かに対処するというときには、時間の余裕をもって動くことが大切です。
公的な相談窓口に相談するときも、管理会社などが提示してきた見積もりや室内の状況、いつまでに解決しないといけないのか、などを相談員に正確に伝えるようにすると解決の道筋も見えてきます。
アパートの退去費用でトラブルにならないよう備えよう
退去費用でトラブルにならないためには以下のことが重要です。
● 賃貸契約を締結するときに、しっかりと原状の回復の内容を確認する
● 住んでいる間は室内を掃除するなど清潔に保つ
● 借りているという感覚ではなく自分の持ち物と考えて丁寧に使う
● 退去するときには、大掃除をして補修できるところは補修しておく
● 汚れ、傷が多くて心配なときは、事前に補修の見積もりを取得しておく
というところを認識しておけばトラブルは未然に防げるはずです。
まとめ
アパートの不動産投資を検討している方にも気になることだったと思いますが、貸す側、借りる側が賃貸契約を締結するときに、しっかりと原状回復を取り決めていれば、トラブルは未然に防ぐことができます。
取り決めをしっかりした上で、ルールを守って気持ちのいい取引をしましょう。